切符の話

全国の電車やバスにいたるまで散々ICカードが普及した今でも、まだ券売機では切符が買えるようになっている。今更切符を買うやつなんているんだろうか?というのが今日のテーマ。でも実際に切符を握りしめて電車に乗っている人を見たのだけれど、さて一体どんな理由があるでしょうか。

消費税増税を受けて電車の運賃が1円単位になり、10円単位でしか扱えない切符は必然的にICカードよりも運賃が高くなったけどそれでも切符を買う人はいる。ICカードに使用期限なんてないし、一回買ってしまえばたとえ「めったに電車に乗らない」という人だって持っていて困ることなどない。持たないメリットが何かあるだろうか。それとも持つデメリットが?

 

定期券を忘れたとき買う、というのは間違いない。この間やらかした。しかも帰りだけ切符を買う、という意味不明な感じに。前の散歩の話(http://nekodaisei.hatenablog.com/entry/2015/09/03/221440)で書いた東京タワーに行ったときかなんかに、10キロくらい歩いてようやっと着いて、じゃあ満足したし帰ろうかな、帰りは流石に疲れたし電車で帰ろうか・・・おや?そこで初めて、だいぶ離れた駅で初めて定期を置いてきたことに気が付いたのだ。出先でICカードをなくした、以外の理由で帰りの切符だけを買うやつはなかなかいないだろう。すごくアホっぽかった。すごくアホっぽかったのに、外から見ても全くわからないのがもどかしかった。あなたの隣で切符持ってる人、こんなアホな理由で切符買ってるんですよ。

 

さて、先日(自分で切符を買う前)見かけた、切符を握りしめた人というのは小学生くらいの少年だった。どうも近くに父親もいるらしい。今時、切符なんて珍しいな、切符買うやつなんているのかと(自分で切符を買う前だったので)思っていくつか理由を考えてみた。父親も切符を持っているところを見ると定期券を忘れたから、ではなさそうだ。

子供に持たせてなくすと困る、というのは一つあるかもしれない。でもなくして困るのは子供自身だし、チャージ金額がもったいない、というのなら少額だけ入れておけばよかろう。カードのデポジット代金も500円とかだし。どちらかというとわざわざICカードを作るのが面倒な言い訳に聞こえる。それに父親も切符を買う理由はない。

次に考えたのは「父親が子供に、教育の一環として切符を買わせた」というものだった。ICカード全盛の時代だし、切符なんて全く見たことなく育つ子供だっているだろう。そんな子供が「常識知らず」として大人から叩かれないようにか、もしくはICカードをチャージする機械についた大人・小人マークを見て「何これ?」と言ったか、きっかけはわからないけれど、切符くらい一度は買っておいて損はないだろう。だから教育的意義を込めてあえて切符を買ってみた、という可能性だ。

「まぁあり得なくはないな」と思ったのだけれど、次の瞬間その真相がわかってしまった。全部納得した。

外国人旅行客だったのだ。

アジア系の顔だったので最初気が付かなかったのだけれど、彼らはどうも中国か韓国か、そのあたりから来ていたようだった。外国人旅行客であれば、いくらICカードが全盛であろうともわざわざカードを作ろうとはしないだろう。もう一度同じ国に旅行するかどうかもわからない。面倒な手続きだったりもなく、現金さえあればとりあえず買うことのできる切符を選ぶのは納得がいく。そんな需要もあるのか、と思って眺めていた切符を持った家族連れは、途中の駅で降りて行った。無事についたのかな。

 

いかに自分の視点からでしか物事を考えられていないのか、ということに気づかされたような体験だった。別にここから「意識高い」教訓を出したいとかは全然ないのだけど、ふとしたことから自分の無意識な前提みたいなものが洗い出されると少し視点が広がったような気になる。対して広がってないだろうけど、視点が広がって新しい面白いものが見つかったりしないかな、とちょっとだけ期待している。