右側通行の話

右側通行だったり左側通行だったり、いろんな道・通路に場所に合わせてルールが決められている。右側を絶対歩かないと死ぬ、とか、足の震えが止まらなくなる、とか、そんな理由もないので基本的にはルールに従って右側とか左側を歩いている。多分みんなそうだと思う。ラッシュ時にもスムースに流れに乗れるしね。ルールに従ってた方が早く移動できるし、逆らう理由も別にない。

逆らう理由も別にない、と思っていたのだけど、もしかするとこの「右側通行・左側通行」にも意識してないだけでどっちかを選ぶ理由がありそうだぞ、と気が付いた。どっちを歩いても変わらないと思っていたけど、しっかりした理由があって右側通行もしくは左側通行を選んでいるかもしれない、と思うようになった。

 

きっかけは、毎日使っていた駅の階段に、「この階段では右側通行をお願いします」という掲示がなされたことだ。その駅にはそれまで掲示はなく、特に理由もなく左側通行をしていたのだけど、「掲示もされたことだし右側通行をしようかな」と思って、左右を変えようとした。しかし、1日、2日ほど試して全然しっくり来なかったので結局ルールを無視してそれまでと同じ左側通行をすることになった。

それまでは、左側通行にそんなこだわりというか、理由があって選んでいたものとは思わなかった。しかし実際には、ルールに逆らってまで左側通行をしてしまうほどの、無意識に左側通行を選択していた理由があることがわかった。また、右側通行を試して全然上手くいかなかった理由の一つに、同じ階段を通る他の人もほとんどみな左側通行のまま変えなかったから、というものがある。この左側通行を選んでしまう理由というのは個人的なものではないらしい。

では一体どんな理由なんだろうか?と毎日右側通行の指示を無視して階段の左側をのぼりながら、駅の構造に問題があるらしいことに気が付いた。本当にざっくりではあるけれど図を描いたのでなんとなく見てほしい。

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きったねえ図だな!直線ががたついてるじゃねえか!

ということは一旦おいといて。

駅の角に階段がついていて左に曲がって階段を上り始める形式だ。もうこの時点で「あぁだから左側通行なんだよ」とお気づきの方もいらっさるかもしれないけど、そう言われてしまうと書く意味がゼロになってしまうのでシムシティとかやって気を紛らわせていてください。わかる人、シムシティとかうまそう。で、この階段の途中に「右側通行にしてね」という掲示がされた。

ここで右側通行にすることの何が問題だったかというと、まずはこの階段が狭かったこと。幅としては、大人が二人並んだらいっぱいになるくらい。そして、駅の出入り口なので当然この階段を降りてくる人がいること。大人二人分の幅しかないところに降りてくる人もいるので、上がるのも下がるのも一列になるしかなくて、上の図みたいに悠々とど真ん中を歩けたりしない。と、どうなるか。

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相変わらずきったねえ図じゃねえか!

許してください。ペイントとノートパソコンのトラックパッドだけで描いてるんです。

さて、上の図を見るとわかると思うんですけど、赤い上りの線と青い下りの線が、階段の下の部分で交差してしまっています。こうなると、階段を通るときにいちいち

「あ、どうぞ」

「じゃあ前を失礼しますね」

「いえいえお互い様です」

「ありがとうございました」

なんてやれば混乱せずに通れるだろうけど、朝のラッシュのタイミングにそんなことしないのでぐちゃぐちゃになってしまう。無意識に経験から「左側通行の方がスムースに通れるぞ」と気づいて左側通行を選んでいたんじゃないかと思います。壁際に沿って曲がるので動線が交差することはまずない。

 

これまでこのような動線が交差するとかしないとかを考えて通路を通っていたことなんてほぼなかったのだけど、実際には無意識に動線を考えて左側通行・右側通行を選んでいたようだ、ということに気が付かされた。今まで他の駅の階段なんかでは全く気にしたことがなかったな、と思ったのだけどそれは階段がはじっこに付いていなかったから動線がここまではっきりと決まらなかったのだと思う。恐らく「右側通行でお願いします」という掲示をした駅員の人も、「右側通行も左側通行も大して変わらないだろう」と思ってこの掲示をしたんだと思うけど、場所によってはどっちが良いのかはっきり決まるところもあるらしい。

これ、個人的にはすごく面白かった。切符の話(

http://nekodaisei.hatenablog.com/entry/2015/09/08/233235

)でも近い話を書いたような気がするけど、「おや?」という経験から無意識の前提っていうのがあぶり出されてくる体験、これからも見落とさずにいたいなぁと思う。