塗りたての話

気になっている張り紙がある。ペンキ塗りたて、というやつだ。塗りたてとわざわざ貼るからには塗りたてなんだろう。歩道脇の道路標識のポールとかがペンキ塗りたてになっていたりする。触ると手にペンキがべったりつくかもしれない。うっかり鞄をぶつけてペンキがついていたりしても最悪だ。距離を取って歩こう。

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でも、こういった「ペンキ塗りたて」がいつまで経っても貼ってあったりする。そもそも、これ、乾いたころに誰か剥がしにくるのか?まだ貼ってあるってことは、まだペンキが乾いてないのかな・・・?それとも貼りっぱなしで誰も剥がしに来たりしないものなんだろうか・・・?いつまでうっかりペンキまみれになる恐怖におびえながら過ごせばいいんでしょうか。ペンキでべったりになる夢を見てしまって夜も眠れません。

一般的なペンキ塗りたての張り紙(一般的、とかあるのかしらないけど)はあんまりちゃんと固定もされてないし、紙自体も薄っぺらいものが多いように思う。ふと思ったことは、「もしや雨が降ったりすると自動的に溶けて外れる仕組みになっているのでは?」ということ。「ペンキ塗りたて」を貼ってから雨が降るまでの間にはペンキが乾くだろう、だからペンキが乾いた後に張り紙を剥がしに行ったりしなくても自動的に外れるんじゃないか?張り紙をくくりつけているのも細い針金だし、張り紙が外れやすくしているのかも。書いておいてなんだけど、たぶん違うよなぁ。ずっと晴れてる時の方が早くペンキが乾くだろうに、晴れてた方が長いこと張り紙がそのままになることになってしまう。塗ってすぐに雨が降ったら乾く前に張り紙だけなくなる、ということもあるだろうし。

「天気予報どうだ?」

「明後日、雨が降るらしいっす、親方」

「よしそうか。ペンキが乾いたころにちょうど張り紙が溶けてなくなるようにするためには、明日作業をやっちまうのが良さそうだな」

とか絶対やらないだろうし。無駄が過ぎる。くくりつけている針金が細いのも、せっかく綺麗に塗ったペンキに針金の跡がついたりしないためだろうし。

 

このペンキ塗りたての張り紙、一週間くらいずっと貼りっぱなしのこともあったので恐らく剥がしたり、自動で溶けたりとかしないのだろう。剥がしに来たりもしないようだ。ということは、塗っている現場を見ていた人以外は「このペンキ塗りたての張り紙は、本当に回避すべきかどうか」がわからないという失敗デザインの物体なんじゃなかろうか。「ペンキ塗りたて」とは書いてあるけど本当にペンキ塗りたてかどうかはわからない張り紙、何の意味もなくない?

単純に、貼りつけた日付を書けばよいと思うのだけど。9/30とか日付が書いてあれば「つい最近塗ったんだな、もしかしたらまだ乾いてないところがあるかも」と判断できるし。書こうよ、日付。年号とかは書かなくてもいい。いくらなんでも一年前のではないだろうし。

我ながら良いアイデアではないか、と思ったけど「本当にそうか?」という思いが出てきた。だって、たまたまその道を通りがかっただけの人とかが小さい張り紙に書かれた日付を見るだろうか。「三日前の日付だからぶつかっても平気だな」とか考えながら歩くかな?ぶつかっても平気だな、と思ったところで。ぶつかって平気じゃなくたってぶつからないだろう普通。通りすがりの人からすれば、いつから貼ってあった「ペンキ塗りたて」だろうが関係なくちょっと良ければいいだけの話じゃないか。日付とか無駄である。

それに、「毎日同じ道を通るんです、だから毎日この『ペンキ塗りたて』を恐れて通らなくちゃ行けなくて・・・」という人だって、もうペンキ塗りたてではないことを知っている。もう三日も前から貼ってあったし。いつから貼ってあるか知ってるなら日付なんか書いてなくてもいい。わざわざ日付を書くのはやっぱり無駄であろう。

そもそもペンキ、乾くのにそんなに時間かかるんだろうか?と思って調べてみるとどんなに長くてもせいぜい1日で乾くとのこと。なんだ。日付を気にする前にペンキが乾いてしまうとは。じゃあ日付入れたりするのって本当に無駄じゃん!昨日も見たな、という「ペンキ塗りたて」は引きちぎっても平気ということだな?!触って乾いてることを確かめてやるからな!!

 

もう一つ気が付いたことは、「この達筆、前も見た気がする・・・」ということ。気になって画像検索をしてみると、違う字体の「ペンキ塗りたて」もたくさんあるのだけど、明らかに同じフォントの「ペンキ塗りたて」張り紙の写真が見つかった!いくら達筆な人でも毎回全く同じフォントで書けるはずはあるまい。弘法も筆に誤りというくらいだし。ということはこの達筆っぽい張り紙は印刷だったのだ・・・!

だとすると日付を入れないのも余計に納得が行ってしまう。そもそもの「ペンキ塗りたて」を手書きなんかじゃなく印刷してあるものを持ってきているだけなら、わざわざ日付だけを追加で手書きするのは余計な手間だ。「日付を入れた方がわかりやすくていいんじゃない?」ってことは誰か気が付いていたのかもしれない。でもその手間が無駄だし余計な手間だということがわかってしまったから、きっとシンプルな張り紙に落ち着いたのだろう。

結局今日もまだ貼ってあったので思い切って触ってみたが、ペンキ塗りたてのポールは案の定しっかりと乾いていた。