散歩@佐竹通り~の話

nekodaisei.hatenablog.com

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地味に続きます。少し間が空きましたが、いろいろあったのです。

前回は長い商店街というかアーケードに出くわしたところで終わりました。

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佐竹商店街、というそうです。東京都の史跡を説明する表示板もあったので、歴史は結構ある様子。夏目漱石とか樋口一葉とかがこの辺りに住んでいたんですよ、みたいな垂れ幕があったりして、積極的に「歴史あるよ」アピールをしていました。この商店街が出来た当時からある店とかないんだろうか?と思って探しながら歩いてみたんだけど、ざっと見た感じではなさそう。まぁ、アーケードを作った時に建て直したりしたんだろうなぁ。

パナソニックだったかな?の小売り店が閉店してた。店の前には「使ってください」という張り紙と段ボール箱が。

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こっちはお皿とかコップが入っていた箱。左側にちらっと写っているのは、たぶんお店で売っていたものの残り?みたいな電化製品でした。といっても何かのリモコン、とか何かの機械、とか「使ってください」と言われたって何に使っていいかわからないものばっかりだった。

もらってください、とか使ってください、とか今までもらったことない。無料でばらまいて良いようなものって、大抵いらないからばらまいて良いんであって、ばらまいて良いくらいいらないものって他の誰かにとってもいらないことが多い、気がする。もちろん、たまたま自分にはいらなかったけど、他の誰かにとっては必要、という需要と供給が一致することもあるだろうし、「わたくしはこのお世話になった商店街を去りますけれども、この商店街のどなたかがわたくしの思い出と思って使ってくだされば幸いであります」というつもりであるかもしれない。

今月の決算をまとめながら、またため息をつく。

「どうしたんだい、あんた。また赤字だったのかい?」

「・・・聡子か」

「あんた、やっぱりここいらが区切りなんじゃないかい?子供らも大きくなったし、赤字を出し続ける店を開けておく理由はもうないだろう?」

「・・・」

「そりゃあ、あんたがこの商店街を愛しているのは知ってるさ。私だって物心ついたころからこの商店街には世話になってたし、ほとんど商店街の人らに育ててもらったようなもんさ。でもねぇ、気持ちだけじゃあ店はやっていけないんだよ」

「・・・そうだな」

もう何か月も前から薄々わかっていたことを、ついに決断した。私はこの商店街を見て育ち、この商店街に支えられて店も大きくしてもらった。だが、もう・・・店は畳むが、できればこの店がここにあったことは忘れて欲しくない。私がこの商店街にいたことは・・・片づけていてでてきた小物を、箱に並べる。「使ってください」もしこれらをもらってくれた人が、私のことを思い出してくれれば・・・シャッターを下ろした前に涙を浮かべつつ箱を置く私に、妻が言う。

「いや、店を畳んだって今度はお客としてくりゃ良いだけでしょうが」

「なんで忘れられる前提なの」

「あんた死んだの」

相変わらず妻は容赦ない・・・

そんなやり取りがあったかどうか知らないけど、お皿とおちょこ気まぐれにもらっていくことにした。家に皿の数が少なかったから。まさかたまたま散歩で通過しただけのやつに持っていかれるとは思ってもいなかったであろう。

 

商店街を抜けて、また路地に入る。問屋とか町工場とかが多いのは、商店街に入る前と変わらない。右に曲がったら次は左へ曲がる。だいたいの方向を見失わないように気を付けて、見失わないようにだけ気を付けて気まぐれに道を曲がる。

窓から小さい模型がたくさんある家があった。模型、といっても、建築模型かな?窓の中を写真に撮るのはいくらなんでもまずいから写真はないけど。たぶん建築事務所なんだろうなぁ。建築事務所だけあってめちゃめちゃおしゃれなんだけど、文字では伝わらないですね。もっと文章力が付いたら伝えられるようになるんだろうか。建築事務所がダサかったら、「ちょっとここには頼みたくないな?」って思うよね。「この建築事務所だったら頼んでもいいかな」って思うようなおしゃれさでした。

窓の外ではバケツにホテイアオイが浮いていた。ホテイアオイっていうのは、丸い茎から葉っぱが生えている水草。水を綺麗にする効果があるとかで、実家の近くの沼にいっぱい植えられていた。水草って、「植える」って表現でいいのかな?少なくとも浮いてはいた。近所の個人商店でホテイアオイを育てていたのだけど、放っておくとどんどん増えるらしくて毎年増えた分を切り売りしていたのを覚えている。水草なんて全く関係ない店だったのにな。茶葉とか売ってた。

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ホテイアオイ、こういうやつです。

また歩いていると、ちょっと面白そうな店が。小山提灯だって、提灯専門店だ!まさか提灯専門店なんてものがあるとは。下町のお祭りとか結構あるから、そのたびに売れると考えると提灯だけ売っててもなんとかなるんだろうか。ちょうど中では職人さんが提灯を作っているところでした。工場で量産する提灯と、職人さんの手作り提灯だとやっぱり違うんだろうか?同じ光量でも明るくなる、とか軽い、とかかな。

路地を抜けたら大きい道路にぶつかった。渡れない・・・小さい路地だとこういう時に好きな場所で渡れるから、そういったところも路地の方が好きだなぁ。左に行かないと横断歩道がないので、進行方向からすると逆なんだけど一回戻る。こういう時に進行方向を見失うと、完全に迷子になっちゃうので気を付けないと。

 

道を渡ってまたふらふらと進む。しかし、そろそろ上野らへんに着いてもおかしくないんだけどな?と思っていると、何やら駅が見えてきた。上野御徒町駅だ!方向は間違ってなかったみたい。もう上野もすぐだ。ふと気が付くと、周りの建物もさっきまでの問屋・町工場から変わって小売店とか一般店舗になってる。マツモトキヨシとかあるし。歩いている人の数も圧倒的に多い。長距離を散歩してくると、こういう「町が変わったな」って瞬間がある。周囲の雰囲気とか、人の数とかがスッと変わる瞬間があったりしてなかなか面白い。

上野に向かって真っすぐ進んでいると、アメ横に到着。さすがアメ横。めちゃめちゃ人が多い。多すぎて歩きづらいくらいだ。今回はアメ横が目的じゃないので、そそくさと抜けて上野駅を目指す。すぐそこだけどね。

5kmくらい歩いてきた目的地ももうすぐだ。歩道が広い。どこからか、太鼓の音が聞こえてくる。お祭りだろうか。時期が時期なのでお祭りがあってもおかしくないけど、神輿が見当たらない・・・でもだんだん音が大きくなってきた。どんどん太鼓の音が大きくなってきて、ようやく気が付いた。寄席だ。寄席の前で太鼓を叩いている人がいる。開演間近なんだろうか。

太鼓の音が遠ざかっていくのを聞きつつ、上野駅に到着。次の用事まで時間もないのでちゃっちゃと電車に乗ってしまう。何もないような道でも歩いてるとそれなりの発見があるから、散歩はやめられないなぁ。blogに書くかは別として、また散歩はしていきたいと思います。

めちゃめちゃ奥まったところにあるローソンでお別れです。

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ではまた。