エアコンがついた話

先日、エアコンが壊れた話を書きました。

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そして、3日前の土曜日、やっと新しいエアコンが取り付けられました。ふーん、で終わらせていただいてもいいんですけど、ちょっとおかしいと思いません?エアコンが壊れていたのに気づいて、管理会社に電話をしたのが11月20日。実際にエアコンが交換されたのが12月5日。実に2週間以上掛かっている。なんでや!

なんでや!とはいいつつ、間に挟まった業者、というか会社が多かったからだということはわかっているのです。あっちに連絡してはこっちで相談し、結果があっちからこっちへ伝わり、といった感じで2週間もかかってしまった。まぁいろいろな伝達だとか、「工事が何時になるかわからないので一日中家にいられる日を教えろ」とか言われて土日にせざるも得なかったりで時間が掛かったのはしょうがないとは思うのだけど、それにしても寒かった。

最初にエアコンの不調に気が付いた11月20日の時点ではまだそんなに寒くなってなかったけど、「そろそろエアコンをつけてもいいかな」と思ったのでつけてみたら動かなかった。ところがその直後くらいから急激に冬型の気圧配置へ置き換わって、もう毎日寒くてたまらない。朝起きるとフローリングに霜が降りている。吐く息がきらきらと輝く。水道が凍っていて水が出ない。天井からつららが延びる。冷蔵庫の中も冷凍庫みたいになってる。南極と間違えたペンギンが部屋を歩いている。そのペンギンには調査用のカメラが取り付けられていて、どこかの大学の研究室に毎日の生活の様子をペンギン越しに観察されることになる。

「先生、なんでこの人はこんなに寒い中で生活しているんでしょうか。ペンギンの生態より不思議です」

「それはだね、暖房が壊れているからだよ」

そこで彼は卒論に「暖房が壊れた部屋に住む人間はペンギンと同じである」という卒論を書いて見事卒業。無事エアコンの修理業者へと就職して、そして卒論のテーマになった人のもとへと暖房を届けるためにやってきたのです。

 

そんな背景があったとも知らずにエアコン業者をうちへ招きいれました。「じゃあ外しちゃいますねー」と言ってさくさくとねじとかカバーとか配管を外していく。作業する横でごろごろしているのもなんなので作業を見ていたのだけど、ふと手が止まる。「何か袋ないですか?」というので何だろうと思うと、鳥の巣があるんだそうな。全然気が付かなかった。もしかすると何年か前に使って今年は使わなかったような巣かもしれない。

さて、工事を見ていて思ったのはよくわからない機械、工具があること。ドライバーみたいな持ち手の工具を金属パイプにつけてぐるぐる回しているとぱっくりと切断された。あんな簡単に金属パイプを切る工具があるのか。いくつかの穴とハンドルが付いた工具をぐるぐる回していると今度は金属パイプに金具が取り付けられた。どうやら金属パイプの端をつぶして”返し”を作り金具が外れないようにする工具だったらしい。変な機械をコンセントにつないで、エアコンの何かの配線とつないで電源を入れると・・・何が起きたか全然わからなかった。何かの検査機器だったんだと思うけど。世の中には専門の人しか使わない機械がいっぱいある。

 

専門用語もそうだけど、専門の工具とかも好きだ。自分でもなんで好きなのかはっきりわからないけど、専門職の人は専門職の人同士で一般人には到底わからないような話をしておいて欲しい。そしてすっと振り返って、「要するにこういうことなんですが」と簡単な言葉で説明してほしい。でもそれもわからなかったりするのだ。

専門用語とか専門工具とか、全然知らない世界が存在するということが好きなのかもしれない。まだまだ世界にはこんなに未知の部分があるんだ、とわかる感覚が専門職の人にあるからかも。もしくは専門用語をつらつらと述べ、専用の工具を手足のように使いこなす様がより「プロフェッショナルらしさ」を演出してより頼もしく、頼りがいがあるように見えるからかもしれない。

ということは、だ。もしかして専門用語を駆使して専用の工具を振りかざせば頼りがいが出るのではないか。頼りがいがある男はモテる。ここから導き出される方程式は、専門用語を駆使するとモテる・・・!きっとモテモテでしょっちゅう女の子をとっかえひっかえして付き合っているような男というのは、女の子の耳元で専門用語を語っているのだ。

「君の瞳にフイユタージュ」

「やっぱり君と一緒にいる時間だけがオーグメンテッドリアリティだね」

「僕と君との間にはもう、ヘルツシュプルング・ギャップはないんだ」

「何言ってるか全然わからないけど、専門家みたい・・・頼りがいがあるわ・・・」

そして身も心も工事も任せたくなっちゃうのだ。きっと。ここで本当のモテ男はきっと、「まぁ、『愛してる』も恋の専門用語だからね」って言うのだ。

 

そんなどうでもいいことを考えているうちに、エアコンの交換工事は終了。やっとこさつららやペンギン達ともおさらばってわけ。新しいぴかぴかのエアコンが吹き出す風の中で、こんなしょうもない文章を書いている。